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前塾生代表に聞いてみた「塾生代表って何がそんなにすごいの?」


今年も残すところあと2ヶ月。今年の塾生代表選挙が迫る中、選挙戦や塾生代表の仕事などについて、第3代塾生代表の前田稔さんにお聞きしました。


立候補・選挙戦について

―――前田さんが塾生代表選挙に立候補しようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?

慶應が大好きで、サークルの代表や三田祭の企画などのいろんなことを経験させてもらいながら、学校の公式のイベントに関わらせてもらう機会が自分は多かった。大学4年の最後というところで、何か学生に関わる大きなことができないかと思っていたところ、学生の運営に関わる全塾協議会と塾生代表の存在を知り、立候補をさせていただいた。


―――塾生代表になったら何ができるか、期待したことはありましたか?

全塾協議会の組織や運営について定められている全塾協議会規約にもあるが、約2100万円を、一人でというわけではないけれども、塾生代表がその使い道を決められる。つまり、自給1000円の居酒屋で働いていた身からすると想像もできないようなお金を、全学生のためになることに使える。これは、唯一無二の経験なのではないかと思った。


―――前田さんが出馬した選挙は、学生社長の椎木さんや應援指導部の若林さんのような強力な候補が出馬し、大混戦となりました。前田さんは、掲げた公約や選挙戦にはどういう戦略があったのでしょうか?当選の決め手は何だったのでしょう?

今となって話すのは恥ずかしいけど(笑)。


対立候補

最初に意識したことは、自分以外の立候補者が重要だということ。強力な相手に選挙で勝つことは意味が大きくて、強力な相手に勝ったその後は、運営もやりやすい。強力な相手に選挙に出てもらいたい、というのは念頭に置いていた。


チーム作り

次は、チーム作り。立候補者の自分はどちらかというとプレイヤーで、代えはきかない。どういう選挙行動をしたら勝てるかという作戦を考えるブレーンが必要だった。所属していたサークルなどの知人3人に、「相手は強力だし、勝てるか分からないけれども、ブレーンになってもらえないか」と頼み込んだ。企画などを考えてくれる三人を中心にチームを作り、所属していた経済新人会という大所帯のサークルや中高からの知り合いなどの30~40人に根強く呼び掛けをしてもらった。ライト層としては、興味を持ってくれている人が見た限りでは400~500人いて、LINEやTwitterで丁寧に連絡をし、自分に支持してくれたお礼と周囲への投票呼び掛けのお願いをして回った。ブレーン3人、ミドル層30~40人、ライト層400~500人。結果的に、得票数も自分が予想していたくらいの数字に落ち着いた。


ポジショニング

そして、ポジショニング。椎木さんは、内部進学・幼稚舎・the慶應というイメージ。若林さんは、應援指導部で活動しているのもあって、学校のために精力的に活動しているというイメージ。二人が、学校の中心にいるというイメージでバッティングしていた。自分は、浪人で補欠合格だったし、イメージとしては慶應の中心からは離れていた。よく演説ではこう言っていた。「慶應をリンゴとしたとき、自分は皮の部分です。皮は、剥かれることもあるし、リンゴとして持ってもらえないこともあるでしょう。けれども、不祥事も起きている中、今は毒リンゴ状態です。蜜も種も皮も毒が入ってしまったら、外から見て煌びやかでも、食べられないじゃないですか。自分は皮の部分だけれども、蜜も種も皮も含めて慶應の人たちは良い人たちなんだなと思ってもらえるような公約を掲げます。」そんな中、少しずつ支持が伸びていった。


キャラのブランディング

後は、ブレーンが自分の性格やキャラに合うようなブランディングをしてくれた。キャンパスを縦断するために120㎞走るなど。椎木さんも若林さんも忙しい方で、汗をかいて泥臭くやるのは”ディープポイント”だった。自分は二人と比べれば時間もあったから…その時は就活もしていたから大変だったけれども…時間を使ってそういうことを熱心にやるのは意識していた。やっているうちに、だんだんと応援してもらえるようになり、結果的に、ありがたいことに当選させてもらった。

一人では絶対に当選しない。最低でも3人の仲間を見つけた方が良いと思う。


塾生代表就任から退任まで

―――塾生代表には、自治会費の分配を決めるなどの毎年やらなければならないこと、その塾生代表の政策としてやることなど、できることが大変多くあります。前田さんの時には、どのようなことをしましたか?


自治会費の分配

夏に事務局にもサポートしてもらいながら、たくさんの人と話して自治会費の分配を決める。一つ選ばなければいけないなら、これが一番重要な仕事だと思う。ただ、自治会費の分配は全ての人にいい顔ができない。自分に投票してくれた層は分かっていたので、それは意識して、そこに傾斜はかけていた。塾生代表選挙は全塾協議会所属団体の協力もあって運営されているが、選挙にあまり関心がない所属団体もいる中、選挙運営を手伝ってくれた公益性の高い団体にも重きを置いた。


不祥事への対応

不祥事に対する対応もすごく考えていた。慶應では、少し前から不祥事が続いていた。2018年辺りは、慶應のブランドイメージにすごくひびが入っていた時期だと思う。学生は警察ではないから、不祥事を取り締まることはできない。どうしようかと考えたときに、不祥事が起きたときはメディアの注目を集めるという点を逆手に取れないかと思いついた。

「不祥事が起きたときは献血を行う」

献血と若き血のダブルミーニングというのもあるが、6か月以内に不純異性交遊をしていると献血できないという意味が込められている。つまり、献血している人は性犯罪をしない。これを考えた他の理由としては、献血が個人でも行えるとても良い社会貢献活動であって、募金のようにお金を動かす必要もないというのもある。自分の血を捧げるのは、ゴミ拾いと同じくらい良いことなのではないかと思い、いろいろ考えた上で献血という公約を掲げた。

しかし、逆に不祥事は増えて、任期の半年の間に何回も起きた。ただ、その中で自浄作用は前より強くなったのではないかと思う。不祥事に対して、お互いを監視し合うようなものというか、問題が起きた時に告発しやすい組織づくりのようなものに貢献できたのではないかと思う。実際に、不祥事が起きた時の風当たりはこれまで以上に厳しくなったと感じる。問題が起きた団体に対してどう責任を取らせるのかという規律は以前より厳しくなっている。これは、健全な活動をしていくにあたって、大学、学生団体、学生個人にとって良いことだと思う。結局、自分は任期中に3回も献血する事態になったが、大学のブランドイメージの改善には一生懸命に取り組むことができた。


選挙費用の転用

選挙の度に全塾生に選挙ハガキを郵送していて、それが無駄だと思っていた。選挙ハガキのために200万円以上が選挙に使われてしまっていたので、思い切って2019年冬の選挙は、「塾生代表というのはみんなもう知ってるでしょ」というところに賭けて、選挙ハガキを廃止した。浮いたお金はちゃんと各団体に配ったから、傾斜はかけつつも、殆どの団体の交付額は増額できて、公益性を考えれば良かったのかなと思っている。もちろん、リスクはある。


毎月開催される全塾協議会定例会の風景


―――その他にも、秋田国際教養大学の学生会との交流、ハロウィンゴミ拾い運動、卒業後の年度三田会会長への就任など、多くのことをされました。

自分が思うように物事を進めるためには、どのようなことが必要でしたか?


大きく分けて、3つあった。

1つ目は、塾生全体からの意見をいただくこと。大学に報告して交渉したり、キャンパスで塾生に直接会って相談も受けていた。誹謗中傷を受けることもあったが、広く全塾生に耳を傾けるということが何よりも重要だった。

2つ目は、全塾協議会という組織の学生たちとの関係性。上部七団体の代表者が議員を務める議会が、今年10月から多数決制になったけれども、その時は全会一致制だった。つまり、当時は塾生代表以外に事実上の拒否権がをもつ人たちがいた。なので、組織に深く関わってくれている人たちの意見も当然聞いた。目立つこともなく、ボランティアでやってくれている人たちだからこそ、ないがしろにしてはいけないという意識は持っていた。

3つ目は、大学。学生自治は大学とは独立した存在であるべきというのはもちろんだけれども、一方で、大学とコミュニケーションを取らないといけないのも事実。なぜなら、キャンパスという空間をお借りしているから。学生たちが、学生たちだけの空間で何かをしていれば良いが、キャンパスという空間は借り物だとは思う。極度に敵対するのは、こちらにも大学にも損だとは分かっていたから、仲良くするわけでもなく、適度な距離感を保ちつつ、コミュニケーションを取れるようにしていた。


「塾生代表」の意義とは?

―――結局、「塾生代表」というのは何ができる役職でしょうか?塾生代表は、「大統領」ではなくて「天皇」では?という批判もありますが、どう思われますか?

お金を分配する力がある、コネクションが強いなど、力は大きい。でも、それだけには収まらないと思う。

塾生代表は、慶應を一番好きでいられる役職。大学が好きだから、全塾協議会の運営も頑張れる。みんなが慶應のことを口では否定的に言っていても、みんなの心のどこかにあるのであろう、「慶應を愛する心」の象徴なのではないか。それだと「天皇」だけど…(笑)ただ、その批判は間違っていないと思う。

要は、「天皇」と「大統領」のハーフくらいだと思っている。厳しく出る場面では「大統領」になれるし、聖人君子にもなれる。そこは、それぞれの塾生代表がある程度は決められると思う。正解はない。

―――もし、前田さんがこれから出馬するとしたら、選挙に際してどのような問題を取り上げると思いますか?

現役塾生の話も聞くと、一番は、キャンパスになかなか行けないというところ。オンラインで何かすることと、オフラインをどうにかすることの二つだと思う。

オンラインのこととして、塾生同士が交流し合えるコミュニティの枠組みを作るというのは、大学の中心にいる人たちの役目だと思う。時間もお金もかかるし、難しいこと。でも、「社中協力」という言葉があるほど、これだけ繋がりを大事にする大学は他にないと感じる。新しく慶應に入ってきた塾生が、あまりそれを享受できていないところを、何とかするべきなのではないか。

オフラインのこととしては、人が集まれる機会をつくること。急に社会情勢が変わって、ルールにもまだ穴がある。新しい形のオフラインでの集まりであるとかを模索する余地があると思う。SNSで何でも晒される時代だからこそ、個人での活動はリスクが大きい。今の状況から前に一歩出られる候補者がいれば、自分が現役だったとしたら投票すると思う。

激変期にある今をどれだけ楽しめるかというのは、重要かもしれない。友達とかにすぐ会えないのはつまらないと思うけど、”ニュースタンダード”な塾生に期待している。


―――前田さんは、半年という比較的短い任期でしたが、塾生代表をやってどうでしたか?

メッチャ面白かった。充実していたから。眠さや疲れというのはあったけれども、精神的に折れることはなかった。半年だったからこそ集中して取り組めて、楽しかったし、苦痛に感じたことは一度もない。本当に周りの塾生やいろんな人に助けてもらえた半年間だったということは、間違いなく言える。その上で、できることならもう一年やれたらなと、正直には思った。欲を言えば、あと二年。


今後の塾生代表に向けて

選挙に勝つのは手段であって、任期中が重要。

選挙に出て何をしたいのかがはっきりしている人が当選すると本当に思う。そこは明確に伝えられるように仲間を作って頑張って欲しい。


 

塾生代表選挙(#塾生代表2021)の情報

全塾協議会選挙管理委員会ウェブサイト (現在は使用していません。)


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